明けましておめでとうございます。

 皆様、明けましておめでとうございます。
 昨年はデビュー以来初めて、一年で四冊の新作を出せました。そのうちの三冊、『邯鄲の島遥かなり』は六年がかりで書き上げた作品だったので、これを単行本にできたのは達成感が大きかったです。小説家としてひと区切りついた心地がし、意識がいろいろ変わりました。今後、作風が変わりそうです。

 で、今年の予定です。まず新作は、ようやく完結した「ハーシュソサエティ」連作を単行本にします。『紙の梟 ハーシュソサエティ』というタイトルで、7月に文藝春秋から出してもらいます。

 文庫はここのところ新装版が多いですが、今年もたくさん出ます。まず3月に『迷宮遡行』が朝日文庫に入ります。次は6月に『プリズム』が実日文庫に、8月に『追憶のかけら』が同じく実日文庫に入ります。実日文庫に入る二作は、両方とも単行本は実業之日本社だったというご縁です。
 中でも『追憶のかけら』は、作中作として旧字旧仮名遣いの手記があるのですが、実日文庫版ではこれを現代語にします。旧字旧かなは辛いから読めない、と思っていた方にはぜひとも今回の現代語版をお手に取っていただきたいです。文春文庫版が絶版になるわけではないので、雰囲気を味わいたい方は文春文庫版を、読みやすさ重視の方は実日文庫を読んでいただければと思います。あ、創元推理文庫版の『プリズム』もそのまま継続販売されます。
 さらに10月に『罪と祈り』が文庫になります。実日文庫です。実日文庫は隔月刊行ですから、つまり三回連続刊行というお祭り企画なのです。『罪と祈り』はそれなりに自信があって刊行した作品でしたが、ぼくが今の読者の感覚を把握できておらず、さほど好意的に受け取られなかったのがすごく残念でした。非常に心残りなので、ぼくは文庫化の際に加筆や大幅訂正はしないのですけど、今回だけは例外で大幅手直しします。読者に受け入れられるものにするつもりです。単行本で面白いと思ってくださった方には、特に読み直していただく必要はありません。ストーリーは同じです。

 昨年はなんと連載を一本もしない年になってしまいました。そんなはずではなかったのに。
 もちろんサボっていたわけではなく、すでに『小説トリッパー』連載の第一回原稿は書き上げています。ぼくはもともとディストピア小説が好きで、いつかやってみたいと思っていました。日本を舞台にしたディストピア小説というと、第二次世界大戦の結果として日本がふたつに分断されるというものが多いです。好きですから、そういう作品はたくさん読んでいます。ただ、作例が多いならぼくがやっても仕方ないので、今の時代に書くなら統合後を描くべきではないかと考えました。かつて分断されていたけれど今はひとつになった、つまりドイツのような日本ですね。そういう架空設定で、物語を展開します。
 タイトルは『ひとつの祖国』です。近々、連載スタートすると思います。
 他にも、今年じゅうに「小説推理」での連載を始めるつもりです。
 もうひとつ、極秘プロジェクトも進行中です。というわけで、ものすごく久しぶりに三作同時並行でストーリーを作っています。極秘プロジェクトが形になるのは、たぶん再来年だと思いますが。小説は、来年には書き始めたい。

 といった感じで、今年は楽しみながらたくさん小説を書きたいと思っています。今年もどうぞよろしくお願いします。