『女が死んでいる』発売。

『女が死んでいる』が発売されました。三年前に出した同タイトルの本の文庫化ではなく、文庫オリジナル短編集です。
 ぼくは短編に自信がないので、これまではテーマやキャラクターが統一された短編集しか出しませんでした。ただまあ、長く続けていれば本数は自然に増えるもので、たくさん書いた中でこれはましというものを集めれば一冊分になりました。
 ちょうど三年前にライセンスの藤原一裕さんとコラボで出した本があり、それを文庫化していいタイミングではあったのですが、小説部分だけでは100枚ちょっとなので一冊分にはなりません。そこで、以前から文庫オリジナル短編集を出さないかとKADOKAWAからは提案されていたので、ならば今がそれを出すいい機会かと考えたわけです。
 どんでん返しがある中短編だけを集めて一冊にまとめてみれば、さほど悪くないなと思いました。年を取って、「若い人ががんばってるなぁ」と自己評価が甘くなったようです(笑)。

 日下三蔵さんがいい解説を書いてくれました。まだ本にまとまっていない短編がたくさんある、と日下さんが指摘してくれていますが、今後も短編集を出す気はあります。次の統一テーマは「奇妙な味」です。そのつもりで最近はそればかり書いているのですけど、奇妙な味って枚数が短くても書けちゃうんですよね。けっこう本数を書いたつもりでいたのに、カウントしてみたらまだ200枚にも達していませんでした。ショートショートも何本もあるしなぁ。
 というわけで、次の短編集は死ぬまでに一冊分になるかどうかわかりません(笑)。

 今週末には、都内と横浜の書店を巡ってサイン本を作ります。お目に留まったら、どうぞ手に取ってみてください。

『乱反射』ドラマ化。

 ようやくマスコミ発表されました。
乱反射』が今秋ドラマになります。
 1月の日記で映像化の発表はもうすぐかなと書いたのに、ぜんぜんすぐじゃなかった(笑)。
 主演は妻夫木聡さんと井上真央さん、監督は『舟を編む』の石井裕也さんと、一回だけの二時間ドラマとは思えない布陣です。テレビ局も朝日新聞出版も、プロモーションには力を入れています。
 来月には、ドラマ帯を巻いた文庫も出荷されます。
 ここのところぼく自身は目立った仕事をしてなくフェイドアウト気味なので、このドラマ化を機に少し露出を増やすつもりです。見かけたら、「おっ、貫井徳郎だ」と思ってください。

 それと、今月には今年唯一の新刊であるオリジナル短編集が出ます!

第64回江戸川乱歩賞。

 一ヵ月勘違いしていました……。
 第64回江戸川乱歩賞の選考委員を務めたので、「小説現代」7月号に選評が載りました。といっても、発売は一ヵ月前ですね……。もう店頭には、8月号が並んでいました……。
 日本推理作家協会のホームページで、選評は読めます。
 一対四で、ぼくが推した作品は負けました(汗)。
 選考委員は何度か務めたことがあるけど、割とよく一対多になりがち。
 でも、選考委員全員が同じ意見なら複数人でやる意味がないので、ぼくみたいに人と違う意見の持ち主が交じる意義はあると思っています。まあ、選考会が辛いんですけどね。
 任期は四年なので、あと三回選考委員をやります。力作をお待ちしています。

サイン本。

 文庫版『我が心の底の光』、発売されました。
 さっそく、以下の書店さんでサイン本を作ってきました。お近くの方は、ぜひお寄りください。

八重洲ブックセンター八重洲本店
有隣堂横浜駅西口店
紀伊國屋書店横浜店
ブックポート鶴見店
三省堂書店池袋本店

 八重洲ブックセンター八重洲本店さんでは、新装版『修羅の終わり』(上・下)にも、ブックポート鶴見店さんでは『灰色の虹』にもサインをしてきました。
 17日(火)には三省堂書店神保町店さんでもサイン本を作る予定です。

『我が心の底の光』文庫化

 また更新が三ヵ月も空いてしまいました。
『我が心の底の光』が文庫になります。今月12日発売です。
 解説は、ブックポート203の成川真さんにお願いしました。
 この作品、自分では難しく書いたつもりはなかったのですが、現在の出版業界の基準からすると少し難解だったようです。そこで、解説で読み解き方を例示してもらいました。わかりやすく、説得力のあるいい解説を書いていただき、大変感謝しています。
 文庫で読み終えた人はもちろんのこと、単行本で読んだ方もこの解説を読めば「そういうことだったか!」と驚くかもしれません。ただ、全面ネタバレ解説なので、読了後にお読みください。
 きっと普通に読み終えて、理解するためには少し能動的な読書が必要だったということにも気づかなかった人は多いのだろうと思っています。

 今年は新作長編を出せないので、8月に文庫オリジナルの短編集を出します。
 三年前にライセンスの藤原一裕さんとのコラボで『女が死んでいる』という本を出しましたが、収録されているぼくの作品は100枚くらいの中編なので、そのままでは一冊の文庫にできません。なので、これまでに書いた単行本未収録作品の中から、特にトリッキーな短編だけを選び、「女が死んでいる」を柱にオリジナル短編集を作ることにしました。
 コンセプトが統一されていない、純粋な短編集を出すのは実はこれが初めてですね。

 本当に長らく放置してしまい、年も改まってしまいました。今頃ですが、明けましておめでとうございます。
 沈黙の間、何もしていなかったわけではなく、いろいろやっていました。一番は連載原稿の書き溜めで、あらかじめ四回分を書いてから連載をスタートさせました。
 すでに第一回は掲載されています。『罪と祈り』というタイトルで、ウェブ雑誌のwebジェイノベルに載りました。このジェイノベル、有料かと思ったら無料で読めるんですね。なので、今から連載を追って毎月読むことも可能です。単行本にする際には大幅加筆をするかもしれませんから、雑誌バージョンが読めるのは今だけですよ。

 他には、毎日新聞にインタビューが載りました。掲載はずっと前ですけど、これもウェブで読めます。こちら

 他には、名前に「犬」を入れられる人たちの作品を集めたアンソロジー、『Wonderful Story』が文庫になりました。ぼくは「犬は見ている」という作品を書きました。

 沈黙が長かった割に、情報は少なめですね。映像化の話は、そろそろ発表かな。試写で見ましたけど、原作を読んでいる人の感想を聞いてみたいです。
 では、今年もどうぞよろしくお願いします。

『修羅の終わり』の新装版ができた。一冊だけでけっこう普通の厚みだから、上下はかなりのボリュームだよね。よくこれまで一冊本にしてたよな。
 装幀が格好よくて気に入ってます。
 下巻には一冊本のときの笠井潔さんの解説を再録させてもらい、上巻には新たに三省堂書店の新井さんの解説をいただきました。

 ぼくはこれまで、テロの話を二作しか書いたことがなく、そのうちの一冊が先月文庫になった『私に似た人』で、もう一冊がこの『修羅の終わり』。で、今読み返すと、『修羅』を書いた二十年前には時代設定を過去に取らなくてはリアリティーがなかったことがわかる。でも『私に似た人』では、今のテロとして描いている。
 二十年を隔てたテロの話を、読み比べていただけると面白いかもしれません。

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