WOWOWへの怒り。

 このようなことをドラマ放送前に原作者が表明するのは珍しいと思う。ただ、無理もないことと理解を得られるものとも思っている。

 ドラマ『犯罪症候群』はシーズン1が終了した。その最終回の途中と最後に放送されたシーズン2の予告を見て、驚いた人は多いだろう。思い切りシーズン2のネタばらしをしていたからだ。
 原作を読んでいない人のために説明すると、そのネタはむろん原作にもある。しかも、中盤以降で判明する大ネタと言っていい。原作である『殺人症候群』は発表当時から高評価を得てきたが、それには少なからずこのネタによる驚きも寄与していたはずだ。そうでなくても、ここではネタと言い表しているトリックやどんでん返しは、ミステリーの命である。簡単にばらしていいものではなく、ネタばらしは出版業界では最悪のご法度である。
 だから、ドラマ化の打ち合わせの際にも、ネタの扱いには慎重さを求めていた。もっと具体的に言えば、どのタイミングでネタを明かすかまで事前に決めていたのだ。
 にもかかわらずWOWOWは、その約束を破った。しかもそれは、原作者に対する裏切りだけでなく、視聴者の興味を削ぐ罪深いものである。
 このようなことは、とうてい許されるものではない。よって、ここで怒りを表明しておく。

 すでに放送されてしまったものは、取り返しがつかない。だからぼくとしては、WOWOWはこういうことをする放送局だから気をつけろと、同業者に警告することしかできない。
 ともあれ、物語を大事にしない放送局はドラマを作る資格がない。WOWOWにはドラマ作りの資格がないと、断罪しておく。

 念のためつけ加えておくが、出演者の皆さんの熱演は賞賛に値するものだと思う。このドラマを面白いと言ってくださる人が多いのは、その熱演の賜物だ。ぼくが問題としているのはWOWOWの宣伝姿勢であり、出演者の皆さんの努力とは関係がない。そこは、この文を読む人もしっかり分けて受け止めて欲しい。